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  「経済学はビジネスの武器だ」 Vol.4         平成15(2003)年2月4日

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       ◆◇『米国の財政赤字は日本経済の命取りになりかねない2』◆◇

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     ◆◇  もくじ

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      □ たくさんのご意見や激励ありがとうございました!
      □ 『米国の財政赤字は日本経済の命取りになりかねない』第2回
      □ 編集後記−「ほっと一息」
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    ┏━━┓  皆さんから、いろいろなご意見や励ましをいただいています。
    ┃\/┃ 大変ありがとうございます。お便りお待ちしています。
    ┗━━┛ 
  
   前回は、初めて具体的な時事問題を取り上げました。今回もその続きで、
  『米国の財政赤字は日本経済の命取りになりかねない』と題してお送りし
  ます。かなり専門用語が出てきますが、とりあえず細かい定義にはこだわ
  らず、大筋をつかむ感じで十分です。それでは今日もまいりましょう。
 
                                             管理人Sun
                                              平成15(2003)年2月4日

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     ◆◇  『米国の財政赤字は日本経済の命取りになりかねない』第2回

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  ○米国の2003年度の赤字は約36兆円に

   前号で、米国の財政赤字が2003年度に1990億ドル(1ドル118円のレート
  で約23兆5000億円)を優に上回る見込みであることをお伝えしましたが、
  昨日もっと大きな金額であるとの報道がありました。
  
   ブッシュ大統領が議会に提出した2004年度予算教書によれば、2003年度
  の米国政府の財政赤字は3040億ドル(約36兆5000億円)になる見込みです。
  この金額は1992年度(父ブッシュの任期の最後の年です)の2904億ドルを
  上回り、米国史上の赤字額として最高となる見込みです。
  
   この数字を経済規模を考慮して比較しますと、米国は日本の2倍のGDPで
  すので、日本は45兆円、米国は36兆円を2で割って18兆円相当ということに
  なります。ざっと日本の財政赤字の方が経済規模を考慮にいれると2.5倍ほ
  ど大きいということになります。
  
  ○日米いずれがより悪い状態か?−23兆円の米国と45兆円の日本
  
   さて、ここで前回の質問に話をもどします。
  
   以上の報道を踏まえてあなたなら日米いずれの財政状況がより厳しいと
  判断しますか?というのが我々のディスカッションのトピックでした。そ
  して私の判断は、米国が厳しいと判断したのでした。では、その理由をご
  説明しましょう。
  
   まず今回は米国の財政赤字をめぐる問題を考えていきます。
  
  ○米国の財政赤字は米国経済の活力をそぐ

   前々回にも触れましたが、米国の国債はそのかなりの部分が米国外で消
  化されています。例えば、日本国内には米国国債が3000億ドル(約40兆円)
  保有されているといわれています。
  
   とすると、米国の財政赤字は、我々のたとえ話に当てはめますと(前々
  回のたとえ話の米国のケースを思い出してください。
  http://sun.s15.xrea.com/mm/arc/mm002.htmlをご覧ください。)家庭が外
  部の銀行や消費者金融から借金をしている状態と例えられます。

   つまり国債が本当に借金と考えられるケースに当てはまります。
  
   借り入れをしている現在はいいのですが、借金を返す時になると高い利
  息を払わなければならなくなり苦労をするということになりますね。
  
    さらに、このことと裏表になるのですが、日本が対外債権国、つまり貿
  易黒字でため込んだ外貨を海外に貸している国であるのに対して、米国は、
  世界最大の対外債務国、つまり、世界で一番借金をしている国なのです。
  もう既に世界最大の借金をしているのにもかかわらずこれ以上の借金をし
  たらどうなるのか、これは財務省ならずとも誰の目にも明らかだと思いま
  す。
  
    このような意味で、米国の財政赤字は日本経済にとって、政治のみなら
  ず貿易面でも重要なパートナーである米国経済自体に悪影響を与える可能
  性があるという理由でまず問題です。
    
  ○円高ドル安は日本保有の米国債の価値を失わせる

   さらに問題なのは、日本で保有されている米国債の価値の下落の問題で
  す。
  
   昨年の米国の貿易赤字は過去最高の4千億ドルほど達する模様です。
   
   これでは、1980年代のレーガン政権下で問題となった、貿易収支の赤字
    と財政赤字が同時に生じる「双子の赤字」とよばれる状態と同じになって
    しまいます。普通、財政が苦しくなればなるほど、その国の通貨は人気が
    なくなりますから、財政赤字が続き外国から借金をすればするほど、ドル
    の価値は下落をすることになります。(ここで、前回もお話しした為替レ
    ートの問題が出てきました。)実際に、為替市場では多額の軍事費を必要
    とする対イラク開戦の予想と共にドル安は進む一方です。
    
    先ほど少しお話ししましたが、一説によると、日本国内での米国債の保
  有高は3000億ドル程度あるといわれています。日本円にすると40兆円弱に
  なります。かりに、ドルが円に対して10%下落する(例えば1ドル=125円
  だったものが、1ドル=113円になるということです。つまり円高ドル安に
  なるという意味です。)と、その40兆円の価値の10%である4兆円が失わ
    れることになります。
    
    4兆円といえば、日本の大型の政府経済対策の真水部分(『真水部分』
    とは、政府の経済対策での実際の政府の支出増の金額のことで、景気に直
  接インパクトのある部分の金額をさします。)に匹敵する金額です。10%
    のドル安は、日本経済に、マイナスの経済対策を一回打ったほどの大きな
    インパクトを持つのです。
  
  ○円高ドル安は日本の輸出競争力を落とす
  
    さらに、円高ドル安は我が国の輸出競争力をそぎます。

    アジアの多くの国の通貨はドルに連動して為替レートが変動するように
  なっています。例えば、現在の我が国のデフレの一因とされる中国の人民
  元もその例外ではありません。円高ドル安になれば、日本製品と比較して
  中国などの製品の国際市場での競争力が上がってしまうのです。さらに、
  日本の貿易黒字がなくなれば、我が国国内での国債消化に問題も出てくる
  可能性もあります。
    
  ○米国の財政赤字こそが悪者
  
    このように、米国の財政赤字は我が国の経済にとって重大なマイナスの
  インパクトがあります。もちろん財政赤字によって、日本から米国への輸
  出も伸びますが、これはかなり限定された効果しかありません。ですから、
  我が国としてはこのような米国の財政赤字垂れ流しを見逃すわけにはいき
  ません。
    
    逆に、日本の財政赤字は、円に対する人気を失わせるわけですから、こ
  の場合は、冗談のようですが円高ドル安をうち消す効果すら期待できるか
  もしれません。
  
  ○米国にこそ必要な財政規律
  
   日本は、いつドルが暴落するかもしれない対外債務国である米国が発行
  するドル建ての国債を大量に購入している、米国から見ればとてもありが
  たいお客さんです。ところが、1985年に米国の貿易赤字是正などを目的に
  ドル安を進めることが先進国の間で合意されたいわゆる「プラザ合意」以
  降、円高が基本となり、日本企業や個人が購入したドル建ての米国債は、
  円建てでみる限り、円高ドル安の悪影響を受けて、しばしば元本割れをし
  た、すなわち買い手が損をしていたといって過言ではありません。
  
   日本も米国債を購入することで毎回損失を出すわけにはいきません。そ
  こで、米国に対しては、国内での政府支出を切りつめ財政赤字を圧縮する
  ことによって、ドルの価値の下落を防ぐ政策を取るよう強く要請する必要
  があります。対イラク開戦をするなら、その分だけ米国内の政府支出を切
  りつめる必要があります。財政規律の確立が必要なのは米国です。つまり、
  財務省流の『財政赤字悪者論』は米国にこそは当てはまります。
    
    そして、今日お話ししたように、米国の財政赤字の日本に対するマイナ
  スのインパクトは、景気がいい時期ならばとにかく、この不況下で構造改
  革を進めている日本経済にとって死活問題にもなりかねないのです。
  
   次回は、日本の状況についてご説明します。日本には日本なりの問題点
  がたくさんあります。米国とはまったく対照的だとも言えるでしょう。

  ○参考リンク

  米大統領が予算教書を提出、財政赤字が過去最大に
  http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030204-00000679-reu-bus_all
  
            ▽    ▽    ▽

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     ◆◇  編集後記-「ほっと一息」

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   財政赤字に関する米国の状況、いかがでしたか?今、米国は唯一の超大
  国として、いかなる国の反発もものともしない強面ぶりを発揮しています。
  しかし、財政面から見るとまったく別の姿が見えてきます。私には、現在
  の米国の姿が五賢帝時代直後のローマ帝国と重なって見えてしょうがない
  のです。最大の領土を達成しながら、まさにその領土拡張が原因で、内実
  は変質が進んでしまっている、そのようなイメージを持たざるを得ません。
  つるべ落としの没落がなければいいのですが。
   
   さて、前回もお知らせしましたが、本メールマガジンの読者の皆さんか
  らの要望が多かった経済やビジネス関係の簡単に読める用語集のメールマ
  ガジン『あなたも3分間でエコノミスト!』についてですが、多くの皆さ
  んからお申し込みをいただいています。誌上を借りてお礼申し上げます。
   
   まだ、お申し込みになっていらっしゃらない方もぜひ一度
  http://sun.s15.xrea.com/mm/termsindex.htmlをご覧になってください。
  重要な経済やビジネス関連の用語についてとにかく簡潔に説明することを
  第一の目的にしています。
  
   それではまた、次回にお目に掛ります。
  
              ▽    ▽    ▽

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     ◇本メールマガジンは週一回、毎週火曜日発行です。
     ◇次回は2月11日発行予定です。
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