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  「経済学はビジネスの武器だ」 Vol.9   平成15(2003)年3月3日

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   ◆◇ 『米国の財政赤字は日本経済の命取りになりかねない5』 ◆◇
        --- 欧州中央銀行からの米国財政赤字批判 ---
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     ◆◇  もくじ

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      □ Pubzineで『優秀誌』に選ばれました!
      □ 『米国の財政赤字は日本経済の命取りになりかねない』第5回
        欧州中央銀行からの米国財政赤字批判
      □ 編集後記

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    ┏━━┓  Pubzineで、本誌が『優秀誌』に選ばれました。
    ┃\/┃ これも皆さんのご支持やご意見のお陰です。
    ┗━━┛ どうもありがとうございました。

   Pubzineの『優良誌』紹介のURLはこちらです。
  http://www.pubzine.com/recommend/genre/recA01-1.html
   よろしかったらご覧ください。
                      管理人Sun
                      平成15(2003)年3月3日
  
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              ▽    ▽    ▽

  ○これまでのあらすじ
   これまで『米国の財政赤字は日本経済の命取りになりかねない』という
  タイトルで日米の財政赤字についてお話ししてきました。

   海外に向けて国債を販売している米国にとっては、財政赤字は極めて大
  きな問題で日本の経済にも大きな悪影響が出る可能性があります。

   一方、日本の財政赤字については、発行額でみれば厳しいのですが、そ
  のほとんどが国内で消化されているため、米国の場合とは異なり、大変な
  問題は引き起こさないことをご説明してきました。

   さらに、この不況下では、財政赤字を減らすという財政再建の問題は、
  失業者救済などの政策などの政策課題と比較すれば、政府全体からみると
  重要性が低く、一部の当局にみられるように財政再建第一主義を唱えるこ
  とは、日本経済全体をみた議論ではなく、まさに「省益あって国益なし」
  という現在の官僚機構の状態を表していると筆者は考えるというのが、こ
  れまでのあらすじでした。
  
  ○G7の意見はどうか:欧州中央銀行からの米国財政赤字批判
   これまでは、理論的に我々の主張を検討してきましたが、この主張に対
  して他の国の政府当局は、どう考えているのでしょうか?
  
   2月下旬にパリで開催されたG7(7か国財務相・中央銀行総裁会議:
  先進国の財務担当大臣や中央銀行総裁の会議。我が国からは通常、財務大
  臣が出席する。)では、米国の財政赤字に対する批判が強くなされました。
   
   ECB(欧州中央銀行:ユーロ圏の中央銀行で我が国でいえば日銀にあ
  たります。)のデュイセンベルク総裁は「世界が心配しているのは米国の
  双子の赤字が拡大していることである。」として、米国の財政赤字と貿易
  赤字が急速に拡大していることを批判しました。また参加の各国からも米
  国の財政政策に対して批判が相次ぎました。 
  
   ECB総裁の米国批判の理由は、米国の赤字拡大が為替市場で一段のド
  ル下落を招く可能性があるからです。

   最近、ドルは、ユーロや円に対して急落していますが、既に本誌でもお
  知らせしたように、ブッシュ政権の新たな経済政策によって、今後、十年
  間に 6,740億ドルの減税を実施すれば、対イラク戦費を除外しても米国の
  赤字は本年度中に 3,040億ドルに達するであろうことが確実視されていま
  す。既に対イラク戦費に関しては、ドイツが負担を拒否する方向で検討し
  ているなど、湾岸戦争時のような各国の肩代わりは望めない状況になって
  います。
    
   そうなりますと、これまで本誌でご説明してきたような道筋で、今後さ
  らなるドル安を招き、欧州からの米国へ投資された資金がドル安での損に
  よって、ユーロ建では減額し、またユーロ高によって欧州からの輸出が減
  るなどによってヨーロッパの経済に悪影響をもたらします。
    
   また、同様のメカニズムで欧州のみならずそれ以外の各国経済を悪化さ
  せる可能性が強くなるとECBは主張しています。(このあたりのメカニ
  ズムは、本誌のVol.3をご覧ください。
    
  Vol.3『米国の財政赤字は日本経済の命取りになりかねない』第2回
  http://sun.s15.xrea.com/mm/arc/mm004.html
      
  ○欧州中央銀行の意見は我々と同じ
   このように、ちょうど我々が考えてきた論理的道筋どおりに、米国の財
  政赤字が他国に悪影響が与えるというのがECBの批判です。一方で、日
  本に関しては、今回のG7では、金融部門での不良債権問題への取り組みの
  重要性が強調されたものの、財政赤字に関しては言及は取り立ててなかっ
  た模様です。
  
  ○しかしこの意見は我が国では一般的でない
   日米両国の財政赤字に関しては、こういった受け取り方が、唯一とはい
  わないまでも国際的にみた平均的な受け取り方だと思います。ところが、
  我が国ではこのように国際的には極めて当たり前の主張が政府当局や、必
  ずしもすべてのマスコミにも受け入れられてはおりません。
    
   実際の経済のメカニズムはその国の政府の政策とは関係なく進んでいき
  ます。我が国のマスコミや政府当局の意見を鵜呑みにしていたのではちょ
  うどバブル期に過大な投資をしてしまった企業や銀行のように今度は我々
  が大きな損害を被りかねないのです。
  
    ○基本的な経済のメカニズムを知ることが重要
   これは何も起業をしなくても、通常の貯蓄といったことでも同じです。
  最近、表面の金利に引かれドル建預金をしてしまった人などは、最近の円
  高ドル安に今頃ほぞをかんでいることでしょう。ドル建の預金は円高ドル
  安によって円建ての評価が急落するからです。そのお金が余裕のある資金
  なら、高い授業料を払っていい経験をしたと苦笑いしていればいいのです
  が、なけなしの学資や老後の生活資金だったらどうでしょうか。その家庭
  の今後の生活設計は大きな修正を余儀なくされてしまいます。
  
   これは絵空事ではありません。例えば粉飾決算から破綻した米国企業の
  エンロンの従業員がその収入を会社のストックオプションにつぎ込んでい
  たケースは多かったのですが、そういった人々は会社の破綻にともなって、
  勤務先も老後の生活資金も子どもの大学進学資金もすべてを失ってしまい
  ました。そしてこういったことは今後の日本では十分起こりえます。
  
   会社は公的資金が注入されるなどして救済されるかもしれません、しか
  し、その場合でも誰も従業員その人を救済してはくれません。なにも最先
  端の議論は必要ありません。日頃から、経済学の基本的なロジックを身に
  つけじっくりと自分で考える習慣をつけたいものです。

   次回こそは以前お約束したとおり、財政赤字の状況について財務省(旧
  ・大蔵省)の主張を取り上げてみます。果たして、彼らは我々の考えに対
  してどのように反論するのでしょうか。
    
            ▽    ▽    ▽
                        
  編┃集┃後┃記┃
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   最後までお目通しいただきありがとうございました。このところ「日銀
  総裁選出」や今回のG7など、興味深いニュースがありましたので、連続
  で時事的なテーマを取り扱いました。ニュースの背景にも経済学的な意味
  合いが強く流れていることがおわかりいただけたのではないかと思います。
  
   また、経済のメカニズムを知ることの重要性について語るとどうしても
  力が入ってしまいます。この点はどうかお許しください。これが目的でこ
  のメールマガジンを書いていますので。
      
   また、今回の記事について、どうお感じになりましたか?ご感想やご意
  見を伺えればと思います。私のサイトの掲示板
    http://sun.s15.xrea.com/bbs/wforum.cgi
    または、電子メール
    suns15xrea@clubaa.com
    までお気軽にお寄せください。お待ちしています。

  それではまた次回お目に掛ります。
  
              ▽    ▽    ▽

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       新たな目標は5,000部です。これはなかなか達成できないでしょう。
       
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