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   『経済学はビジネスの武器だ』 Vol.11  平成15(2003)年3月20日

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   ◆◇ 『国債は踏み倒せるのか1:財政破綻に陥るケース』 ◆◇

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  ┏━━┓  まぐまぐでも、本誌が『お勧めメールマガジン』に選ばれま
  ┃\/┃ した。これも皆さんのご支持やご意見のお陰です。
  ┗━━┛ どうもありがとうございました。

   今回から、ご登録の皆様、ありがとうございます。また、発行が予定よ
  り遅れたことをおわびいたします。腱鞘炎がぶり返してしまいました。
    
   さて、以前に、某県の公務員さんからご質問をいただき、このマガジン
  を読んでくださる皆さんにも参考になると思いましたのでご返事をするお
  約束をいたしました。ところが、それからずいぶん経ちましたが、他のニ
  ュースなどの解説があったなどしまして、これまでなかなかご説明をする
  チャンスがなく今日まで引き伸ばしてしまいました。そこで、今回ようや
  くお約束どおりにご質問にお答えします。
  
   後ほどご紹介しますが、ご質問の内容は、突き詰めていえば「国債は、
  日本政府が日本国民から借りたとはいっても、いずれにせよ返さなければ
  ならないのではないか?」ということです。
  
   このことを考えていく前に、まず、注意しておかなければならないこと
  があります。それは、我々が「国」といった場合、それが「政府」のこと
  なのか、それとも「政府」と「国民」をあわせたものなのか、よく考えな
  ければならないことです。
  
   これから考える国債の問題もそうですが、日本人の場合はしばしば、「
  国」の概念があいまいで輪郭がぼけてしまいがちです。日本の歴史で、よ
  しあしは別としても第二次世界大戦直後の6年間以外は、「政府」がつね
  に自「国民」に属する人々で構成されてきたからでしょう。実は、「政府」
  が常に自「国民」で構成されてきた国というのはいわゆる先進国や大国の
  中にもあまりありません。しいていえばフランスくらいでしょうか。
  
   今日お話しすることについては、借金とはいっても、「政府」にとって
  の借金なのか、それとも「政府」と「国民」をあわせた「国」全体にとっ
  ての借金ということになるのかに注意をして読んでください。では今日も
  よろしくお願いします。

                      管理人Sun
                      平成15(2003)年3月20日
  
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              ▽    ▽    ▽

  ○読者からの質問:国債を踏み倒せるのか?
   それでは質問をご紹介します。
   『初めてお便りします。○○県在住の公務員です。メールマガジンの「
  国債を家庭の借金に例えるのは間違いだ1」についてお聞きしたいと思い
  ます。
  (1) 海外から借金していないから「国債を家庭の借金に例えるのは間違い
  だ」ということについてはよく理解できました。
   しかしながら腑に落ちないのは、
  (2) 家庭内で旦那が奥さんから金を借りたものであるとしても借金は借金
  ではないのでしょうか?。それとも同じ身内だから返せなければ踏み倒せ
  ばいい、チャラにしてしまえばいい?ということなのでしょうか?。
   「チャラにすればいい」ということでなければ「借金は借金のはず」で
  す。
  (3) 「同じ身内から借りたのだから、返済期限とかはあまり気にしなくて
  いい。」ということであれば、「政府が国債という形で国民から借金をし
  ているのは『自転車操業』で返していけばいい」ということなのでしょう
  か?。つまり「毎年の予算で借金は返していくけれどもそれを上回る?借
  金もしていく」ということで良いということなのでしょうか?
   この「経済学はビジネスの武器だ」がますます発展していくことを祈念
  し、良きアドバイスがいただけることを期待して、このメールを送ります。
  』(一部改変省略させていただきました。)
  
  ○国債を家庭の借金に例えるのは間違いだ
   では順を追って、お話しましょう。
   まず(1) は、以前の繰り返しになるのですが、
  ・日本の国債の場合は、米国などのケースと違ってほとんどが国内で消化
  されて(買われて)日本「政府」が日本「国民」から借金をしているため、
  家庭にたとえるとお父さんとお母さんの貸し借りのようなものであるとい
  うことです。
    
  ・一方で、米国やアルゼンチンのような国の場合は、国債を発行して外国
  から借金をしていますので、返済する時には国外に利息付でお金が流出し
  てしまいます。これは、つまり「国」が外国から借金をしているわけで、
  家庭にたとえると、家庭が銀行や消費者金融から借金をしていることにな
  ります。
  
   詳しくは、バックナンバーの「国債を家庭の借金に例えるのは間違いだ
  1」
  http://sun.s15.xrea.com/mm/arc/mm002.html
  をご覧ください。
  
  ○踏み倒す方法:デフォルト(債務不履行)
   (2) については、まず、踏み倒して、借金を返さなければ、デフォルト
  (債務不履行)と呼ばれる「政府」の倒産状態となります。それ以降の信
  頼もがた落ちになりますので、再び国債を発行しようとしてもよほど利率
  をよくしなければ売れなくなってしまいます。ですから、ご質問にあるよ
  うに通常は踏み倒すことはしないわけです。
  
  ○アルゼンチンのケース:昔は非常に豊かだった
   では、万が一デフォルト(債務不履行)に陥ったならばどうなるのか、
  2001年12月に外国債に関してデフォルトに陥ったアルゼンチンのケースに
  ついてお話しましょう。
  
   今では信じがたいことですが、アルゼンチンは、第一次大戦後から第二
  次大戦直後にかけて、先進国並みの生活水準を誇っていました。広大で肥
  沃な土地に天然資源。普通に考えれば日本よりもずっと豊かであってもお
  かしくはありません。もっとも経済の世界では必ずしもこういう「恵まれ
  た」国が豊かであるわけでもありませんし、アルゼンチンのように、昔は
  豊かだったが今は、という例はチェコのように他にもあります。ところが
  チェコはソ連共産主義の犠牲になったわけですが、アルゼンチンは「国民」
  の選択で道のりをたどったところが大きく違います。
  
   いずれにしても、稼いだ収入を身分不相応な無駄遣いによって消費して
  しまい、その結果の過少投資と、政府の政策の誤りにより、生産に必要な
  機械や工場、また当時の中心産業であった牧畜を効率化させるようなシス
  テムの導入に失敗しました。
  
   第二次世界大戦後、ミュージカルなどで有名なエビータの夫ペロン大統
  領などによる政権やその腐敗に反対した軍事独裁政権なども、韓国の朴政
  権のケースとは異なり民衆の人気取り政策に走り、経済の建て直しに失敗
  しました。当時から現在にかけて貧富の差は大きくさらに拡大しています。
  それ以上に、民衆の声が政治に反映されないことがアルゼンチンの経済の
  没落につながりました。
    
  ○固定相場制を導入したが結局破綻
   このような経済の没落に対処するため、経済学者の提案に基づき、アル
  ゼンチン政府は通貨ペソを、1989年からドルとの固定相場制を取り、1ド
  ル=1ペソで固定して為替の変動が生じない体制にしました。これは、為
  替の変動の可能性を取り除いて外国からの投資を呼び込むことを目的とし
  た政策でした。が、結局2001年12月にアルゼンチン政府がデフォルトを宣
  言したため、ペソに対する売りが殺到し、2002年にペソの切り下げ(ペソ
  安ドル高)を余儀なくされました。
  
   それから経済はインフレがさらに悪化し混乱を極めています。3月19日
  現在では、1ドルが3.07ペソで、デフォルト前の約三分の一の価値しかな
  くなってしまっています。言い換えると「国民」の財産がドル換算で三分
  の一になってしまったということです。
  
   このように近代的な国家運営では、土地や資源の多い少ないなどよりも、
  「政府」がどのような考え方を持って行政を行っているかに将来がかかっ
  ているのです。このことは石油埋蔵量世界第2位といわれるイラクの現状
  を見てもわかることです。
    
  ○もし日本がデフォルトになったら
   まったく考えられないことですが、仮に日本政府が、国債を「踏み倒し
  た」場合には何が起こるでしょうか。かなり大胆ですが考えてみましょう。
  
   まず、国債が本来の値段で償還されないわけですから、国債を買ってい
  た企業や個人のうち、あるものは倒産するかもしれません。もっとあり得
  るケースは、デフォルトに陥りそうだという噂が立つと同時に、多くの投
  資家が一斉に国債を市場に売りに出し、日本の経済が大混乱に陥ることで
  す。
  
   また、今後の経済の状況が悪くなることが予想されれば、海外からの投
  資家や一部の日本人の投資家は、手持ちの日本の株式債券などの価値が下
  がる前に処分してその資金を国外に持ち出します。すると、円だった資金
  を、ドルなどの外貨に両替をするわけですから、円売りドル買いが起こり、
  売られた円が、人気がないために安くなり、逆にドルが高くなります。
  
   それから先なにが起こるのかは実はよくわかりません。なぜなら、日本
  の場合は発展途上国と違い技術や優秀な労働力があるからです。
  
   債務不履行になった場合には、他国からの資金が引き上げられて、急激
  な通貨安が起こりますが、日本の場合技術力はもともとあるわけですから、
  円安が起きた場合、輸出自体はぐんと伸びるはずです。その後何年間も経
  済が混乱するということにはならないかもしれません。石油などの輸入物
  価は円安が原因で急上昇しますが、あるいは逆にそれを機にデフレから脱
  却することができるかもしれません。(もっとも、いったん債務不履行に
  なってしまってはそれ以降の国債の発行は極めて難しくなるでしょうけれ
  ども。)
  
   が、まさにその時に直後の復興を見越した外資によって、円安を利用し
  て土地が猛烈に買い占められるなど、企業や「国民」の所有物が買い叩か
  れ経済に大きな爪あとが残るでしょう。もっとも「国民」の自衛手段とし
  ては、猛烈な円安の直前に、円をドルに替えて海外の銀行に預けるとか、
  復興を前提とすれば円の先物取引をすれば損失は抑えられるかもしれませ
  ん。
  
   このようにデフォルトは、「政府」にとっても「国民」にとってもひど
  い結果を生みますので、日本の場合には増税をするなどしてこのような状
  態に陥らないように手が打たれることと思います。
  
  ○経済学抜きでは今後の生活を考えられない
   さて、このように円レートの大幅な変更が我々「国民」の生活に大きな
  影響を与える可能性があるわけですが、円レートの変化といったことは、
  経営学の取り扱うものではなくまさにマクロ経済学の守備範囲に入ります。
    
   また、アルゼンチン政府が発行した円建ての国債は、年率5%という高
  利回りで人気を我が国で呼びましたが、この国債を買って大きな損害を被
  った方も多かったことでしょう。アルゼンチンの円建て国債以外にも、エ
  クアドル、ウクライナなどの円建ての国債がデフォルトに陥っています。
  
   このように、企業や「国民」の生活がマクロ経済に関する知識を抜きに
  して考えることができなくなったのが我が国の経済の現状です。
  
  ○もっと巧みに踏み倒す方法はないか?
   では、「政府」からみて国債を踏み倒すことはやはり不可能なのでしょ
  うか?ここまでお話ししてきたようなデフォルト(債務不履行)を宣言す
  るという方法では不可能です。他の方法はないのでしょうか。実は、ピン
  と来た方はおいでではないかと思いますが、大インフレを起こすというこ
  とで可能です。
  
   次回は、今回のご質問の回答の続きとして、「国債踏み倒し方法として
  のインフレ」と「自転車操業」についてお話しします。
  
  ■参考リンク
   バックナンバー「国債を家庭の借金に例えるのは間違いだ1」
   http://sun.s15.xrea.com/mm/arc/mm002.html
  
            ▽    ▽    ▽
                        
  編┃集┃後┃記┃
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   最後までお目通しいただきありがとうございました。今回は、以前から
  お答えしなければと思っていたご質問にやっとお答えすることができまし
  た。この質問をくださった、某県の公務員さん、読んでいらっしゃったら
  ぜひご感想をメールや掲示板へお送りください。首を長くしてお待ちして
  おります。
    
   また、今回からお読みくださった皆さんも大勢いらっしゃいます。どう
  もありがとうございます。このメールマガジンは、過去の内容も踏まえて
  お話しを進めていきます。ですから、バックナンバーがご必要ではないか
  と思います。その場合はこちらをご覧ください。
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