http://sun.s15.xrea.com/ ━━━━━━━━━━━━━━━━Vol.13━

   『経済学はビジネスの武器だ』 Vol.13  平成15(2003)年5月20日

    ……………………………………………………………………………  

  ◆◇『国債は踏み倒せるのか3:自転車操業とプライマリーバランス』◆◇

  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  ┏━━┓  「国債は踏み倒せるのか」について考えています。
  ┃\/┃ 今回は、自転車操業について考えます。また、久しぶりに
  ┗━━┛ ウエッブサイトの方にも追加をしました。
   
   ずっとウエッブサイトのほうも放っておいていましたので、少しは使い
  やすくしようといろいろと考えています。その第一弾が「時事経済リファ
  レンス」というページです。詳しくは、また後ほどお知らせします。それ
  では、今日もよろしくお願いします。
                      管理人Sun
                      平成15(2003)年5月20日
  
  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

            ▽    ▽    ▽

  ○前回のあらすじ:増税は不人気、大インフレは「国民」が困る
  
   前回は、大きく積みあがった国債の残高を踏み倒すことなく、どのよう
  にして減らすかについて考えました。一番まともな手段は、増税してきち
  んと返済することです。ところが、増税は「国民」にとても評判が悪い政
  策です。例えば、私などは消費税には賛成なのですが、日本の世論の大半
  は消費税について悪い印象を持っているようです。
  
   増税がだめな場合はどうすればよいのでしょうか。例えば大インフレが
  起きたら(起こしたら)どうなるでしょうか。従来発行されている国債は
  固定金利ですから、インフレが起きて物価が上がっても同じ金額を返せば
  すみます。インフレが起きるということは、同じことを裏から言えば、お
  金の価値が下がることです。実際に返済する借金の実質的な負担を減らす
  ことができれば政府にとっては大変楽になります。
   
   しかし、大インフレが起きた場合、大変な被害を受けるのはお金を貸し
  た側(=国債を買った「国民」)です。国債の実質的な残高が大インフレ
  で少なくなった場合には、実はその減少分は、本来「国民」が受け取るは
  ずのお金が「政府」の負債の埋め合わせにいってしまったことになるので
  す。
  
   詳しくは、バックナンバーの『国債は踏み倒せるのか2:大インフレか
  大増税か?』
  
   http://sun.s15.xrea.com/mm/arc/mm012.html
   をご覧ください。
 
  ○新たに借り入れたお金で借金を返す「自転車操業」は可能か?
   このように、借金を正攻法で増税して返すのもなかなか難しそうですし、
  また、大インフレが起きて結果的に「政府」の借金の負担が減ることも我
  々「国民」の立場からは望ましくありません。
   
   そこで、某県の公務員さんからのご質問の後半部分をもう一度お目に掛
  けますと、
  『「同じ身内から借りたのだから、返済期限とかはあまり気にしなくてい
  い。」ということであれば、「政府が国債という形で国民から借金をして
  いるのは『自転車操業』で返していけばいい」ということなのでしょうか
  ?。つまり「毎年の予算で借金は返していくけれどもそれを上回る?借金
  もしていく」ということで良いということなのでしょうか?』
   
   と、「自転車操業」でやっていくのはどうか?というご提案です。これ
  はなかなかいい提案です。でも、なにか少し言葉にならない不安も感じま
  す。では、どのようにすれば安定した?自転車操業をしていくことができ
  るのでしょうか。

  ○「安定した?自転車操業」ができる条件とは?
   では、自転車操業について考えていきましょう。まず、例によって家計
  に例えて考えます。家の財布を握っているお母さんが、気がつかないうち
  に膨れ上がってしまったクレジットカードの残高の返済に困っているシー
  ンを考えてください。さて、彼女が気をつけなければならないことは何で
  しょうか。
  
   借金を増やさないためには、いろいろな手段が考えられます。まず、こ
  れ以上、新たな借り入れをしないことが基本です。そして、また、新たな
  借金をしていなくても、自分のお給料が年に5%づつしか伸びていかない
  のに、借金の金利が年5%を上回れば自分の収入と比較した借金の合計金
  額の比率は大きくなってしまうでしょう。
   
   そこで、まず第一に、自転車操業とはいっても、やはり借金の金額が雪
  ダルマ式にふくれあがってしまってはどうにもなりません。ですから、こ
  れを成功させる最低限の条件は、やはりこれから毎月のやりくりの中で、
  もうこれ以上の新たな『借り入れを増やさない』ことです。お母さんも、
  お父さんや子供に隠れてブランド品のバーゲンをクレジットカードで買い
  あさることはもうやめにしなければなりません。
   
   第二には、借金の金利の方が、自分の給料の伸びよりも大きい場合には、
  もし新しい借り入れをしなくても、いつの日にか破産してしまうでしょう。
  自分の年収が年間3%しか伸びないのに、年利15%もある借金をしてい
  れば、自分の収入と比較した借金の総額の占めるはどんどん大きくなって
  しまうからです。
  
   第三に、借り換えをする借金は『高い金利』のところから借りてはいけ
  ません。お金に困ったからとはいっても、クレジットカードよりも金利の
  高い消費者金融から借り入れるのはまずいでしょう。心ある消費者金融会
  社は、来月のお給料が出たら返せるくらいの範囲の計画的な利用を勧めて
  いるくらいですから。
   
   つまり簡単にいえば、『これ以上借金を増やさずに、高い金利の借り換
  えはしないこと』につきます。それでは、これからこの二つの条件につい
  て経済学的な観点から考えていきましょう。今回は、『これ以上借金を増
  やさない』方法についてお話しします。
   
  ○第一の条件:これ以上借金を増やさない条件
   ここで、まず第一の条件に関して、新しい考え方をご紹介します。それ
  は、「財政のプライマリーバランス」または「財政の基礎収支」とよばれ
  る考え方です。
   
   プライマリーバランスが均衡した状態とは、「政府」からみて、過去の
  借金(国債)の返済以外の、公共事業や社会保障費といったその年度の歳
  出は、新たに借金をしないでも、その年度の税収だけでまかなうことがで
  きる状態のことです。
  
   つまり、言い方を変えますと「今年新たに発行された国債によって国民
  から借り入れたお金のみで、国民に今年期限の国債のお金を払い戻すこと
  ができる状態」です。(つまり別の言いかたをすれば、「政府」から見れ
  ば今年「国民」に返さなければならない分をまかなう以上のお金は、新た
  に「国民」から借りないという意味です。)つまり自転車操業であること
  には変わりはないのですが、「清く正しい自転車操業」とでもいうべきで
  しょうか。
    
   プライマリーバランス(財政の基礎収支)が、バランスの取れた状態に
  なれば、少なくとも今の状況を悪い方向に持っていくことはとりあえず避
  けられます。ただし国債の残高を減らす(=国の借金を減らす)ためには、
  このプライマリーバランスが黒字(=公共事業や社会保障費といったその
  年度の歳出の総額が、その年度の税収よりも少ない状態)にならなければ
  なりません。
   
   実際の日本の中央政府の現在の状況はといえば、平成14年度当初予算ベ
  ースで13.3兆円のプライマリーバランスの赤字になっています。これを改
  善するための具体的な手段としては、増税をするか、国の支出(歳出)を
  減らすかの二つの手段しかありません。現在の小泉内閣は増税はしないと
  しているようですから、消費税の引き上げなどは行われない模様です。す
  ると公共事業や医療費の削減でこれを達成するしかありません。これはこ
  れで政治的にも難しいのですが、とりあえずこれで借金をこれ以上しない
  状態にできたとしましょう。
   
   さて、ここまで書いてきましたように「プライマリーバランス」が均衡
  した状態にあれば、ひとまずこれ以上新たな借金はしなくてもすむように
  なります。
   
  ○国債金利が成長率より高いと負債は増える一方
   しかし、次に問題になるのは、既に借り入れた借金にも当然利息がかか
  ることです。家のたとえを続けると、給料が一年で3%しか伸びないので
  あれば、借金の利息がそれ以上であれば、新たな借金をしなくてもいつの
  日にか破産してしまいます。
   
   国の場合は、大雑把な言い方をすれば、 GDP成長率が国債の金利よりも
  高ければいいのですが、低ければ財政が破綻してしまうことになります。
  現実の日本はどうかといいますと、平成3(1991)年以降は基本的に成長
  率よりも国債の金利の方が高い状況が続いています。これは不況のために
  成長率が低くなっていることが大きな原因です。いいかえれば、今のよう
  な不況が続く限り国債の金利の方が成長率よりも高いままになってしまい、
  財政は破綻してしまう可能性があります。国の成長率は0%になることも
  よくありますが、だからといって借金の利息を0%にしたのでは誰もお金
  を貸してくれませんから、政府としては景気がよくなければいつもよりも
  まして困ってしまうわけです。
   
   つまり、日本の場合、現在のような不況が続いたとすると、新たな借り
  入れをしないことだけでは、「政府」の財政状況は悪化を続けてしまうと
  いうことです。よくいわれるようなカンフル剤的な景気対策(国債を発行
  してそのお金で道路やダムなどを作る公共事業などをするタイプのもので
  す)による一時的な好況ではなく、政府が何もしなくても国民の消費が盛
  り上がり、民間企業が生産のための工場設備を増やすなどの設備投資を行
  うことによってもたらされる好況が来なければならないのです。
    
   この点を考えると、いわゆる構造改革を進める立場の人々の議論もよく
  解かります。次回は、今回の続きですが少し構造改革についても考えてみ
  たいと思います。
  
  ◇参考リンク
  http://web.archive.org/web/20020213040730/http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014i.htm
  財務省『コラム:プライマリーバランス』

   クリックしてもうまくいかないときは2行に別れた URLを1行にコピー
  してブラウザのURLの欄に貼り付けてお使いください。

  http://www.mof.go.jp/mof/tomorrow/10.htm
  財務省『財政事情の国際比較』(プライマリーバランスの解説あり)

  http://sun.s15.xrea.com/mm/arc/arc2index.html
  本誌バックナンバー
            ▽    ▽    ▽ 
    
  お┃し┃ら┃せ┃
  ━┛━┛━┛━┛━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  
   ウエッブサイトに、「時事用語経済用語オンラインリファレンス集」を
  追加しました。
    
   これは、歌右衛門氏の『エコノミー&マーケット』や、富山県統計課の
  『経済指標のかんどころ』のような定番サイトを含め、時事問題や経済関
  連の情報、用語、書籍の検索がオンラインで無料でできるリンクをまとめ
  てみたものです。
  
   インターネットにはあまりにもたくさんのサイトがあります。まさに玉
  石混淆といった観がありますが、ここでは、単なる統計データ集や学者の
  学術論文のサイトではなく、あくまでも辞書・事典や簡単なガイドのよう
  に精読しなくても要点だけ読むという使い方ができるサイトを中心に選び
  ました。
  
   ご関心があればブラウザのブックマークなどに入れていただければ便利
  だと思います。これからも頻繁に改訂していきます。
  
  「時事用語経済用語オンラインリファレンス集」
  http://sun.s15.xrea.com/econlink.html
  
   最後までお目通しいただきありがとうございました。それではまた、次
  回にお目に掛ります。
    
            ▽    ▽    ▽ 

  ―――――――――――――――――――――――――――――――――
  
  ◆発行者 管理人Sun: suns15xreacom@naver.co.jp
  ◆ご意見、ご希望、ご質問はできる限り誌面に反映いたします。
   お気軽に、私のサイトの掲示板
   http://sun.s15.xrea.com/bbs/wforum.cgi
  までお寄せください。お待ちしています。
   なお、いただいたご意見等は掲示板や誌上でご紹介させていただくこと
  があります。ご了承くださるようお願い申し上げます。
  ◆ウエッブサイト『ビジネスの武器としての経済学入門』:
   http://sun.s15.xrea.com/
  ◆登録と解除:
   http://sun.s15.xrea.com/mm/mmindex.html
  『まぐまぐ』『melma!』『メルマガ天国』『Pubzine』『カプライト』
  『Macky!』『ティアラ』『AMDS』『めろんぱん』『Posbee』『E-Magazine』
  『マリンネット』以上の各配信システムを利用させていただいています。
  ○総配信部数 5,510部 (前回比90部増)
   今回も大勢の皆さんにお申し込みいただきました。
   ご愛読本当にありがとうございます。
  ―――――――――――――――――――――――――――――――――
  -------------------------☆「経済学はビジネスの武器だ」☆ Vol.13--
  
  


メールマガジン『経済学はビジネスの武器だ』の無料配信登録はこちらから
 

あなたのメールアドレス(半角):

 まぐまぐ

メールマガジン『あなたも3分間でエコノミスト!』の無料配信登録はこちらから
 

あなたのメールアドレス(半角):

 まぐまぐ
このページの最初に戻る
<< Back

「ビジネスの武器としての経済学入門」ホームページへ

   「ビジネスの武器としての経済学入門」

Copyright © by 管理人Sun  All rights reserved
最終更新日:平成15(2003)年5月20日