不良債権と景気
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「不良債権」の定義

金融機関から見て名目上は資産であるが、実際には回収が著しく困難な貸出金をいう。普通の状況でも生じるが、資産デフレ(=地価、株価などの資産価格が下落すること。)のためバブル期(80年代後半から90年代前半)に貸出しのため担保に取った土地などが急激に減価したことにより、90年代半ば以降、全金融機関にとって大問題となった。

  解説(現実の経済での意義と経済学的な裏付け)

不良債権がある場合には金融機関は、貸し出しに消極的になるため、企業の資金繰りが悪化し、今回の不況の回復の足を引っ張る大きな原因となっている。

また、現時点での日本の金融機関の不良債権の総額は40兆円程度からそれを上回る金額とされているが、注意しておかなければならないことは、現時点での日本の金融機関が抱えている不良債権問題とは、バブル終了以降の貸し出しも不良化したものであることに注意する必要がある。バブルの後始末で生じたものは、ほとんど既に銀行内の引当金による償却が終わっている。逆に、1997年以降から年間10兆円程度新たな不良債権が生まれているともいわれている。これはいかに銀行の経営陣の経営能力が不足であったのかを如実に現わしている。

企業が銀行を通じて資金を調達する間接金融の長所の一つは、企業が直接に証券市場などから債券や株式の発行で資金を調達する直接金融と比較して、不況期にも過去の信用を活かして比較的に順調に資金を調達することができることであったが、このように不況期に、いわゆる貸し渋り、あるいは貸しはがしといわれるような行動を金融機関が取る(あるいは取らざるを得ない状況に陥る)とすると、もはや間接金融主体の時代は終わりを遂げたと考えざるを得ない。

不良債権の最終処理は景気を上向かせるか?

最近の政府の不良債権処理の方針は「最終処理」に傾いている。

この不良債権の「最終処理」(直接償却)とは、単に金融機関の帳簿上で不良債権を、引当金を積み上げることによって実際の損害額を確定させずに償却を行った(とする)「間接償却」とは異なり、実際に、企業を解体させて担保を金融機関が売却する(つまり企業を倒産させる)ことや、不良債権そのものを(主として外資系の)不良債権処理会社に転売して、明示的に損害額を確定させる手法である。

従来の間接償却では、帳簿上の処理が中心であったため、査定の甘さなどで不明朗さがつきまとっていたが、最終処理方式によればその金額は確定する。

では、金融機関の不良債権の「最終処理」を行うことで景気は上向くのであろうか。ここで注意しなければならないことは、最終処理が行われることで、経済の供給側の能力は上がることは期待できるが、需要側である家計の今後の経済動向に対する「期待」への影響は必ずしもプラスのものだけだとは考えられないことである。

つまり、最終処理に伴って、不良債権の発生源となっていた企業が倒産し、失業者が仮に短期間でも大勢出た場合は、そのことに消費者の心理が影響を受け、消費が益々冷え込む可能性すら短期的には考えられる。

私の見方では、現在の不況は、消費者の実際の「所得」ではなく、「期待」が冷え込んでいることが大きな原因であるが、この考え方からすると不良債権の最終処理は景気回復の切り札とはなり得ないと考えられる。

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Last Updated 19 January 2003