「現代日本経済論」日本経済の現状
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「現代日本経済論」レジュメ(第3回講義使用)
12.5.6

Q:就職先として金融機関を考えているが、1.金融機関の将来性、2.不良債権問題の解決策、3.資産価格下落の理由について教えてほしい。

A:1.銀行については、不良債権の問題があり当分厳しい。証券会社は、景気が回復するまでは厳しいが、業界としては今後伸びる。なぜなら、企業が設備投資などのための資金を調達する際に、従来は、銀行から資金をかりる「間接金融」に頼っていたが、今後は、証券会社を利用して社債発行や株式発行などによる「直接金融」が一般的になっていくことが予想される。これは、今回の不況で銀行が自己の都合で貸し渋りを行ったため、企業からの信頼を大きく失ったためである。
2.即効性のある解決策はない。なぜなら銀行の不良債権は、土地などの資産価格が一時的に高騰したバブル期に採算が取れるかどうか分からない貸出が行われたために生じたものであり、少しずつ解消していくしかないため。
3.土地、マンション、株価などの資産価格は景気の動きなどに大きく左右される。住宅については更に人口問題にも影響される。現在は、景気が悪く、また、金融機関が、特に企業向けの土地購入の資金を貸し付けてくれないなどから、土地価格などが下落しつづけている。(株価に関しては、景気回復に伴い最近上昇し始めている。)ちなみに、今後も長期的に土地やマンションの価格は下落を続けるものと考えている。

「不良債権」とは?
 金融機関から見て名目上は資産であるが、実際には回収が著しく困難な貸出金をいう。普通の状況でも生じるが、資産デフレ(=地価、株価などの資産価格が下落すること。)のためバブル期(80年代後半から90年代前半)に貸出しのため担保に取った土地などが急激に減価したことにより、全金融機関にとって大問題となった。

T.序章「日本経済TODAY」
1.現在の景気の状況を踏まえた導入。
教科書の論点:「今回の不況は、回復してきた経済活動に対して、97年春に政策的対応を誤ったためである。すなわち、その原因は、財政収支改善を優先させ、緊縮財政を採用したことによる。」→妥当な指摘である。

「不況」とは?:企業が儲からなくなること。何らかの原因で、販売額が落ち、その結果、失業が増えたり、労働者の所得なども落ちること。その原因は、石油ショックや急激な為替の変動など多岐にわたる。
 往々にして「販売額下落⇒労働者の所得下落⇒消費を控える⇒販売額下落……」という悪循環が起こり勝ちである。

景気に関連する指標
・経済成長率(GDP、GNP)、失業率、生産、物価、所得…

2.『政府が間違った政策判断』⇒財政収支改善を急ぎすぎ、緊縮財政を採ってしまった
 97年春には景気は上向きだった。そこで、政府は経済が回復したと誤判断した。しかし、実際は、経済の自律的な上昇のみでなく消費税引上げ(3%→5%へのアップ)のための駆け込み需要が大きかったことにより、景気が一時的に上昇したように見えただけだった。
⇒景気が回復していないのにも係らず、更に税金などを引上げてしまった。そのため景気が悪化した。

・財政構造改革法(97年12月臨時国会で成立)
→赤字国債の発行を抑制することなどによって、現在の財政赤字を是正しようとするもの。不景気な経済の現状に合わないとして98年5月改正され、財政健全化の目標も2005年まで延期された。
・97年度予算の「9兆円の実質増税」
→消費税アップ(5兆円)、特別減税廃止(2兆円)、医療費自己負担比率引き上げ(2兆円)の合計が9兆円

なぜ緊縮財政は行われたか
⇒大蔵省を中心とした、景気を軽視して財政均衡のみを重視する立場によって行われた。
(1)97年春の景気の回復力の見誤り
(2)赤字国債の解消を目的としている

財政赤字とは?
→歳出(国の年間の支出)が歳入(国の年間の収入)を超過する財政の状態を言う。一般には、悪いことだとのみ考えられている。しかし、国内の有効需要水準を高めて、完全雇用を実現し、景気の後退を防止する手段として公債を発行して財政支出を増額するというケインズ的財政政策の考え方において積極的意味付けがなされている。

赤字国債とは?
→公共事業による道路、港湾などの建設費等をまかなうために発行される建設国債と対になる言葉で、人件費等の経常経費、福祉や教育をまかなう費用を調達するために発行される国債。一般に無駄遣いだとされてマイナスの評価をされる。が、必ずしも無駄ではない。
 なお、両国債とも国の民間からの借金であることには変わりないので、赤字国債を発行せず建設国債のみ発行していても、国の財政全体は赤字になりうる。

3.望まれる景気対策の方向とは?
・金融政策(金利などによる景気政策。具体的には公定歩合の操作などが有名)か財政政策(公共投資)か、あるいは減税か?
・長期的視点が必要
→規制緩和、法人税減税、所得税の減税もしくは、累進税率の平準化、
→つまり、単にそのときの(短期的な)景気刺激だけでなく、長期的な観点から新たな産業が生まれるような制度や税制の必要性あり

4.銀行などの不良債権問題
『金融再生関連法九法成立と23兆円超の追加対策』
しかし、98年に入ると、景気の悪化に対してようやく対策が取られるようになった。
4月 総合経済対策(総事業規模16兆円)
5月 財政構造改革法改正
7月 小渕内閣成立
10月 金融再生関連八法と金融機能早期健全化緊急措置法(公的資金枠60兆円)
11月 緊急経済対策(総事業規模24兆円)

なぜ、銀行などの金融機関の不良債権問題が重要なのか?
⇒金融機関は、不良債権問題があると、企業や家計への貸し出しに慎重になってしまう。そのことは、企業が必要な資金を得られないことを意味し、企業の経済活動を大きく妨げるため。

⇒政府の適切な政策の効果があり、現時点では景気は、上向きの状態にあり、悪化は生じていない。採用計画を上方に修正している企業も多く出てきている。

講義に対する疑問、希望、意見などがあれば遠慮なく毎回のアンケートや電子メールで連絡してください。講義の中でお答えします。



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Last Updated 24 December 2002