「現代日本経済論」高齢化時代の財政1
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「現代日本経済論」レジュメ(第9回講義使用)
12.7.1
教科書第5章「高齢化時代の財政」(P.172)
1.高齢化と国民負担率の問題
 我が国の長期的な経済の問題を考える場合に、「人口の高齢化」の問題はきわめて重要。

 15歳から64歳までの生産年齢人口は1995年を頂点に減少に転じた。また、「老齢人口比率」(65歳以上人口が総人口に占める比率)は14.8%と他の先進国並となった。つまり、我が国は既に高齢化社会への入り口にある。
 また、高齢化の速度も各国に例を見ないほど速い。これらが重大な問題を引き起こす。つまり、働ける年齢の人の割合がどんどん減少していくことが、働いている人一人あたりの負担額が大きくなることを招き、年金や福祉の問題に大きな影響を持つのである。
 高齢者対生産年齢人口は、悪化している。 1:4.4(1995)⇒ 1:2.2(2025)

 急速な高齢化によって国民負担率は急上昇する。そのことは国民一人一人の負担がきわめて大きくなることを意味する。国が支出する金額が増えることは同時に財政状態の悪化も意味する。

我が国の国民負担率(P.178参照)
1975年 85年 98年
25.8% 34.4% 37.8%

国民負担率:国民所得のうち、税金(個人の所得税、法人税の他に、もちろん間接税である消費税も含む。)と社会保障負担(公の年金や公の健康保険の掛け金)の合計が占める比率。税金も、社会保障負担も国民として収める義務のあるものであり、自分で自由に使えない。そのため、この国民負担率が上昇すると、自分の(税引き前)収入から自由に使える割合が減ることになる。

現在は、まだ国際的に見てもさほど国民負担率は高くない。が、今後大きな制度改革がないと仮定した場合、経済企画庁の試算によると2025年には52%程度になる。大幅な財政赤字分を含めると73%程度となる。(P.174)この負担率の上昇は社会保障費を中心とした支出が急増することが原因である。
ここで注意すべきことは、国民負担率の悪化は公務員(地方公務員、特殊法人職員含む)が多いからではないことだ。人口あたりでは英米の半分、フランスの三分の一程度である。

税金、社会保険料をどのように納めているか:平均的サラリーマンの場合
(1998年)(P.176)

税引き前総収入 59万円     96年 75年
− 健康保険、雇用保険、厚生年金等の社会保険料 4.9万円 8.3%← 4.0%
− 税金 (直接税) 4.4万円 7.4%← 4.6%
可処分所得 50万円
仮に貯蓄等 10万円
仮に消費 40万円
内消費税 2万円

社会保険料+直接税+消費税
4.9万円+4.4万円+2万円 11.3万円

 日本という国全体をこの「平均的サラリーマン」にたとえて大雑把に言うと「国民負担」は、この約11万円にこのサラリーマンが勤めている会社の納めた法人税(仮に従業員が100名ならば会社全体が納めた法人税の1/100)と、雇用者負担分の社会保険料(この場合は大雑把に言うと4.9万円)をあわせたものとなる。これは最低でも11.3万円+4.9万円=約16万円であり、税引き前の収入の少なくとも27%となる。つまり、国民負担率は「少なくとも27%」ということになる。これが50%を超えたらどうなるであろうか。

 厚生年金の負担分は、96年時点では個人、会社合計で標準報酬月額(1ヶ月の名目上の収入の平均額)に対して14.5%の負担であったが、現在は17.35%である。今後は、現在と同じ給付水準を保つとすれば、高齢化のため受給者が急増するので2010年には27.5%、2020年には31.5%にする必要がある。が、年金制度の改正をした結果(=年金の給付水準を下げる等)2025年に27.6%程度と押さえることができる予定である。

 教科書には「国民負担率が高いことは、それだけ政府が国民生活の面倒を見ることを意味する。それを良しとする人々もいるに違いない。」(P.175)と書いてある。恐らくスウェーデンのように「高負担高福祉」の国を念頭に置いているのだろうが、スウェーデンは、人口の半分近くが公務員に準ずる人々であり条件が異なる。我が国では不可能である。

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Last Updated 24 December 2002