「現代日本経済論」国際経済と日本の貿易1
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「現代日本経済論」レジュメ(第13回講義使用)
12.10.28
教科書第7章「国際経済と日本の貿易」P.272
1.自由貿易主義
(1)貿易のメリット
 ・なぜ貿易を行うのか?
 ⇒弁護士と秘書の分業の例 P.305
 ・なぜ自由貿易は管理貿易よりも望ましいのか?
 ⇒「高率の関税や輸入禁止は外国から安く買えるものを高い費用をかけて国内で生産させ、産業活動全体を不利にする。」アダムスミス『国富論』
 穀物条例廃止論(P.284)
 ※詳しくは理論編を参照。なお、教科書冒頭のアジア経済については次回講義で取り扱う。

・超大国の下での自由貿易
 国際公共財の提供:政治面では安全保障、経済面では通商体制の維持。

⇒超大国にとって都合が良いのが自由貿易体制だが、同時に他国の経済発展をも促したという点は評価されるべき。
 先進国は比較優位を失った産業を途上国に譲り、比較優位の産業に特化する。これにより、自由貿易の長所が発揮される。ただし、衰退産業からの労働力などの資源の撤退などに失敗するとそのままその先進国は衰退に向かう。

(2)GATT・IMF体制
・GATT(関税・貿易に関する一般協定)とは?
 多国間主義、無差別主義、つまり貿易取引のルールを加盟国すべてに平等に分け与えることで、世界貿易を促進しようとするものである。輸出入制限は、原則的に禁止とされている。
 具体的には、A国がB国に対して関税の減免措置を取ったとしたら、B国も同様にA国に対して関税などを下げなければならないし、また、最恵国待遇の対象となっているほかの国にも同じ扱いをしなければならない。これらの結果、関税や輸入制限などが世界的に減り、自由貿易の方向に向かうことが考えられる。
・ブレトンウッズ体制はIMF(国際通貨基金)と世界銀行を中心に為替安定と途上国への資金援助を通じて金融面から世界経済の発展を推進する仕組み。
⇒両者併せて第2次大戦後の自由貿易を支えてきた。
⇒1950年代から60年代に世界貿易は拡大し、この体制は成功した。
⇒背景に超大国としての米国の存在がある。

(3)地域ブロック化の進展
i)EU(欧州連合)
⇒目的:従来のEC(ヨーロッパ共同体)から拡大発展。人物金の移動を自由にする。続いて単一の通貨(ユーロ)を持ち、最終的にひとつの国家となる。EU本部はベルギーの首都ブリュッセルにあり、各国に大使館を持つなど、実際の国家と同様の活動をしている。
ii)NAFTA(北米自由貿易協定):米国、カナダ、メキシコで構成。内部で関税を廃止する等の貿易振興策を取る。その一方で外部に対しては閉鎖的。
iii)APEC(アジア太平洋経済協力会議):地域ブロック主義に反対し、自由貿易を堅持する。

(4)貿易をめぐる日米の対立関係
i)日米貿易摩擦の対象の変遷
 繊維⇒鉄鋼、カラーテレビ⇒自動車、ハイテク産業⇒金融、流通業等のサービス分野

ii)『アメリカのハイテク産業の競争力評価』報告書 1982年12月
・「先端技術産業は、成長率は全産業の成長率の2倍であり、すべての分野の技術進歩に貢献している。またこの分野は、国家の安全保障と密接に関連する。」
⇒「規模の経済(規格の世界標準化を含む)」、「将来に高い成長率が予想される場合」、「他の分野への応用可能性」といった要素のあるものが、大きな比率を占める場合には自由貿易は必ずしもすべての国に望ましい結果をもたらすものではない。

iii)日本の産業政策批判
 先端産業育成などの産業政策を米国は批判するが、これはフランス等欧州では普通の政策である。

iv)プラザ合意の重要性
1960年代半ば以降、いくら輸出自主規制を相手国に求めても米国の貿易赤字は改善しない。(つまり、米国の輸出金額よりも米国の輸入金額が大きい状態が改善しない。ほうっておくとお金がなくなってしまう。)これは、為替レート自体がドル高だったからである。そのため、1970年代初頭からドルの切り下げが行われてきたが、最終的に1985年のプラザ合意により、各国が協調してドル安に誘導することにより、米国製品の輸出競争力を強化しようとした。その結果、我が国では急激な円高が生じ円高不況となった。

・1985年9月、先進五カ国蔵相・中央銀行総裁会議による、ドル高是正の合意(プラザ合意)を契機にそれまでの$1=約240円から、$1=約120円に上昇。
・背景にはレーガン大統領による高金利政策がある。それは過剰なドル高を産み、米国は輸入超過となった(貿易赤字)。なお、レーガン大統領は一方で大幅な財政支出の増加を行ったので政府も財政赤字になった。この状況を特に「双子の赤字」と呼ぶ。
・ただし、レーガン政権時の規制緩和が現在の米国の好況を支えるさまざまな企業の躍進の基礎を作った。

v)米国の一方主義
・スーパー301条:米国が米国の基準に照らして、貿易相手国の不公正な取引慣行や取引行為があった場合には、違反国に制裁措置をとることが出来るとした米国国内の法律条項。
・日米構造協議:本来は、貿易不均衡を是正するために、双方が相手国に対し、構造的な問題を指摘し、具体的な改善目標を指摘するものであるが、その実質は、日米間の貿易不均衡は、日本側の取引慣行などの経済風土や経済システムにあるとして一方的に日本に構造改革を迫る内容である。
⇒これらは、米国が一方的に我が国に干渉しようとする不当なものである。

(5)米国経済学者の多数意見
 こうした米国の政策に対しては、米国内の経済学者から経済学的な観点から反論が寄せられた。
i)「スーパー301条に反対する声明」
GATTシステムのもとでの自由貿易があらゆる点で勝っていることを証明。
・管理貿易や脅迫をすることは米国自身の利益にもならない。
・スーパー301条はあまりに一方的で無法者のやることである。
・貿易収支は、マクロ的な要因で決定される。米国は消費をしすぎているので国際収支が赤字になるのである。

ii)長期の経常収支はISバランス(貯蓄投資バランス)で決定される

(6)日本の黒字体質
・日本の経常黒字は、1960年代末から定着した。(これはすなわち後述の「国際収支天井」が無くなったことと同じ意味である。)GNPに対する比率は最大で1986年に4.2%となった。
・日本は、原材料を輸入して、付加価値の高いハイテク製品を輸出している。ところで、付加価値の高い製品は、原材料に比べて所得の増加率以上に早く需要が増える。そのため、日本はどうしても貿易黒字になってしまう。

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Last Updated 24 December 2002