「現代日本経済論」日本型経営
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「現代日本経済論」レジュメ(第17回講義使用)
12.12.9
教科書第10章 日本型経営システムについて:経営革新と雇用問題
1.日米の失業率比較
(1)日米の失業率逆転 P.431
・日米の失業率は極めて接近し、最近では日本の方が失業率が高いといわれている。
・平成11年版労働白書による分析:現時点では米国方式によって平成11年2月の日本の失業率を計算すると、4.7%が4.2%と低下する。
⇒いずれにせよ、従来は日本の方がはるかに低かった失業率が、米国の方が低いといわれるようになった。(4%台)

(2)日米の失業の性質の違い
 両国の失業の様子を比較すると、従来から半年以上の長期失業率は、米国の水準がやや高いものの日米ともにおおむね1%程度とさほど大きな差はなかった。つまり、両国とも、長い間仕事が見つからない人々の割合は大きくは変わらなかった。しかし、最近では米国が好景気を反映して日本の半分程度となっている。つまり、日本の方が長く失業している人が多くなってしまったことを示す。
 また、1ヵ月未満の短期失業率は従来は米国が大きく上回っていた。これは、米国の労働市場が流動的であることを反映している。しかし、最近では米国の短期失業率も徐々に低下しつつある。

2.日本型経営システムは成功したか
(1)1992年にソニー盛田会長の指摘した日本の企業の問題点P.447
A:かつて、日本の産業界は家電製品、自動車などの消費財を大量生産し、その輸出が貿易摩擦を生んだことがある。
B:バブル期の土地投機や、証券・金融不祥事に象徴される企業エゴ、反社会的行為が多発している。=コーポレートガバナンスの問題
⇒ともに大変重要な批判である。では、なぜこのようなことが生じるようになったのか。日本的経営システムに関連があるのではないか。

(2)日本型経営システムとは
 企業内における協調的な労使関係に基づく共同体的な生産管理と人事政策。
⇒年功序列賃金と終身雇用
・長期的継続的取引に基づく拡大された共同体としての系列・企業集団の形成による長期的視野に立つ研究開発投資やシェア重視の積極的投資。
・産業政策や行政指導に見られる政府と産業界との緊密な関係。

(3)日本的経営を可能としてきた条件
i)「シェア拡大主義」
 米国の企業は、株主の発言力が強いため投資収益率や株価を重視し、短期的に収益を最大にする(目先の利益を重視する)ことが目的とするのに対して、日本の企業は製品のシェア拡大や、将来の成長性の高い市場でのシェア拡大を目標とする。果たしてこのような手法が今後も有効かどうかは疑問である。

ii)低い資本コスト
 日本企業は自己資本比率(株主資本)比率が低い。一方、米国では株式市場からの資金調達のコスト(=自己資本コスト)が高い。米国では、日本企業のように低収益率では株式市場からの資金調達は不可能である。
⇒資金コストが低く、低収益でも資金調達が可能であるため、目先の利益にあまりこだわらず長期的かつ戦略的な投資を行える。

 これらのために盛田批判にあるAのような大量生産が行われた。

iii)雇用維持重視の日本企業:「共同体的性格」
・終身雇用:企業が、従業員の入社から定年までの長期間について雇用する制度。(別に生涯に渡って面倒をみるという意味ではない。)多くが、業績によって大きく差のつかない年功序列賃金を伴う。
・企業別労働組合
 日本では、民間の労働組合は基本的に企業別労働組合であるため所属する企業が倒産すると労働者も失業してしまう。そのため、労働運動は戦後の一時期を除いて理性的なものが中心であった。一方、欧米では労働組合が職種別で企業の枠を越えており、配置転換により幅広い技能を身に付けさせることは不可能である。
⇒これら終身雇用と企業別労働組合のために、我が国の企業は「共同体的性格」を帯びるようになった。このことは、労使の協調や企業全体の機動的な運営など多くの長所を持つが、また、一方で内部で厳しいチェックなどが行われない傾向も強く持っている。これがBにあげられている違法行為の温床となりうる。

iv)生産工程の改良を中心とする姿勢
画期的な新製品を開発するのではなく、従来の生産工程の改良を目指す。
・QCサークル活動(現場の小集団単位の品質管理・改善提案運動)パートタイマーまで参加。
⇒米国では、単能工中心なので、作業工程の問題点を見つけ改善に繋げることができない。
⇒この点は、未だ日本企業が優れている点である。

結論 最近は、雇用慣行をはじめとした日本的経営に対して批判的な論調が強い。確かに日本企業の最近の業績は高くなく、情報技術関連の産業には日本的経営は不向きであるが、一方で、不良債権の問題などは一部の業界が原因であり、依然として日本的経営には長所もあることは忘れてはならない。

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Last Updated 24 December 2002